設計が上手い人にこそ、マーケティングが必要な時代になりました。

なぜなら良い設計かどうか?は他人が決めます。

しかし、売れていない多くの建築士は、「自分は丁寧に、上手に仕事をしているのに、仕事があまり来ないのは、世間の見る目がないからだ。」と思っているようです。

自己所有する住宅やビルでさえ、近隣や訪れる人が、その建築の丁寧さや見た目を、素敵だ、すばらしいと思ってくれるとは限りません。さらに言えば、自分以外に丁寧に、上手に設計・監理している他者が巨万といることを見ようとしていないのです。

さらに、windows95(1995年)からiPhone(スマートフォン)が一般化し、SNSが浸透している、今も手元の画面でこの文章を読んでいるのに、自身の設計・監理した建築を魅力的に見える画像や映像として撮影し、インターネット上にアップロードしていないのです。

もちろん、自ら撮影しなくとも、勝手に他人がしてくれれば良いのですが、影響力のある人にアップしてもらえていない、残念な状況がいまのところ続いているのです。

「いやいやそんなことはありませんよ。ホームページも作成しているし、スマホでも美しく見えるように建築写真家に撮影してもらった写真をアップしているし、雑誌にも取り上げられている。その上、見学会やセミナー(勉強会)も開催しているけど。」

それが事実であれば、繁盛していると思います。

逆に繁盛していないのであれば、以下のことが該当すると思います。

住宅以外の公共建築や大型物件をやっていないのではないですか?
掲載された雑誌というのは、最近の掲載でしょうか?毎年や数か月に1回は取り上げられていますか?
雑誌やメディアで取り上げられているのは、同業者向けのものばかりではないですか?
見学会やセミナーも最近参加されているのは、同業者や施工会社の社員さん、学生さんが参加ではありませんか?施主さん候補ではあるけれど、固定メンバーで、今後、建てようと思っている方は少ないのではないでしょうか?

確かに、「できたものを見せれば、その実力が私にあるのがわかるでしょ。」その通りです。

しかし、その一方で、同じようなもの、またそれ以上のものが、他の誰かでもできるのではないでしょうか?

建築業界に限らず、上手ければ、繁盛するという訳ではありません。

例えば、おいしい寿司を出す寿司屋が繁盛するかと言えば、そうではありません。旨い寿司屋ならたくさんあります。
繁盛している、し続けている寿司屋は、ただ美味しいだけではないプラス・アルファが必ずあります。

逆に言えば、上手いのに繁盛していない、かつては繁盛していたが、最近はさっぱりだというのにも、ショーケースのガラスが曇ったままである、飲み物を出す時にコースターを出さなくなった、途中でおしぼりを交換しなくなった、まだ飲み終わっていないのに下げてしまっている、懇意にしていた卸の大将がいなくなって良いネタを安くまわしてもらいにくくなったなど理由があります。

技術力が高ければ高いほど、繁盛する可能性は高いと思います。そして、年齢を重ねる度に身体的な体力は衰えるかも知れませんが、技術力やノウハウは向上していると思います。そして、一緒にやってくれているスタッフが体力の部分をカバーしてくれていたり、1人では思いつかないアイデアを出してくれたり、現場を何度も調べに行ってくれたり、現場監督のご機嫌をとってくれていたり、自身の気付かないところをフォローをしてくれたり、かつて自身が若い時に師匠のためにしていたことを代わりにやってくれていたり、いなかったりと状況が変わっているのです。

そんな理由を見つけ、改善するためにも、「マーケティング」が必要なのです。

「設計事務所のためのマーケティングマニュアル」にも記載の通り、「マーケティング」とは、「Market(市場)」+「ing(現在進行形)」=「市場が動いている」と考えます。そして、この「Market(市場)」を構成する大きく2つの要素を「顧客」+「商品(サービス)」として、「顧客」の動き(ニーズとシーズ)をしっかり見極めるとともに、その顧客に提供していく商品(建築というサービス)を対応させていくことであると定義しました。

これは、今思えば、外向きのマーケティングと言えるかも知れません。

今後は、その「顧客」を定め、「商品(サービス)」産み出している起点となる、自分(設計事務所)の中身、所長をはじめ、所員、マインド、協力会社など、内向きのマーケティングをどう変化、成長させていくことができるかが重要になると思います。